2015年度 愛光中学校 算数 【1】(10) 数列・周期性の解答解説です。
問題文は、四谷大塚ドットコム 中学入試過去問データベース よりダウンロードして下さい。
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数列の規則性を考える
書き写す
数列の問題は、ただ眺めているだけでなく、5回ぐらい書き写すようにと、子どもには教えています。
では、頭の中の独り言を再生しながら、書き写してみましょう。
$2, 2, 4$
2 が 連続ででているなぁ… その後に 4 か… ということは、$2+2=4$ もしくは $2\times2=4$の可能性があるな。
$2, 2, 4, 2$
また 2 !? ということは、前の2つを和が次に来る。 前の2つの積が次に来る。 というさっきの推測は違うな…
$2, 2, 4, 2, 4, 6$
4 が 繰り返し 出てきたぞ、そして 6。 6 の 2つ前(2, 4)の和が6だな…
$2, 2, 4, 2, 4, 6, 2 $
また 2 !? よくわからないなぁ…
$2, 2, 4, 2, 4, 6, 2, 4, 6, 8, 2, 4. 6, 8, 10, 2, 4, \cdots$
どういうことだ?? 5回は書け!! って言われているから、書いてみよう。
$2, 2, 4, 2, 4, 6, 2, 4, 6, 8, 2, 4. 6, 8, 10, 2, 4, \cdots$
$2, 2, 4, 2, 4, 6, 2, 4, 6, 8, 2, 4. 6, 8, 10, 2, 4, \cdots$
って…
$(2)$ を書いて、次に$(2, 4)$ を書いて、次に $(2, 4, 6)$を書いてるんじゃない!?
偶数を$2$から書き始めて、どんどん増やしていってるのかな!?
このルールが正しければ、次は、$2, 4, 6, 8$ その次は、$2, 4, 6, 8, 10$ となるはず。で、問題文はその通りになっている!! ということは、このルールが正しい。
書き写す理由
センスと言ってしまえば、それまでなのですが…
例えば、「今日の午後の天気は晴れ時々くもり。気温は17度。」という文章を書き写す時は、「今日の」までを一旦見て、「今日の」と書き写すと思います。「今」で区切って、一文字づつ書き写す事はしないと思います。
算数の数列でも一緒で、この問題のようなある一定の繰り返しを持った数列では、何度か書き写すうちに、頭の中で覚えやすい(=再生しやすい)区切りで、区切るように、頭が勝手想像してくれます。
この問題では、2 が キーポイントとなって、書き写す時に、2から始まる並びに周期性がある ということに気づきます。
受験算数をしていると、
- 等差数列
- 等比数列
- その応用
といった、名前のついた数列に目が行きがちですが、この問題のような 周期性のある数列を見つける場合に、5回書き写す方法は、効果的です。
慣れてくると、子どもの方が頭が柔らかいので、私より先に周期性を見つける事も多いです。
問題に当てはめる
さらに規則性を見つける
2から始まる、ひとかたまりを箱に入れて、箱に左から順に 1, 2, 3, ・・・ と名前をつけます。
最初の2は箱No.1に入っている。次の(2,4)は箱No.2に。次の(2,4,6)は箱No.3に入っているイメージです。
ここで、2つのことがわかります。
- 箱の名前と、入っている数字の個数は一緒
- 箱の中の最後の数字は、箱の名前の2倍の数
箱No.5 を例に取ると、
- 箱の名前は 5。入っている数字は、2, 4, 6, 8, 10 の 5 個。
- 箱の中の最後の数字は 10。箱の名前である 5の2倍。
初めて20が現れるのは?
初めて20が現れるので、箱に入っている最後の数が20になっている箱の名前を探します。
箱の中の最後の数字は、箱の名前の2倍の数であることを利用して、箱の名前を計算すると、
$20\div2=10$
よって、箱No.10の最後の数字が 20となります。
箱No.10の最後の数字は何番目?
いきなり箱No.10 を解くのではなく、簡単な例でやってみます
問題文に書かれている箱No.5に注目
- 初めて10が現れるのは、箱NO5 の最後。
- 10が左から何番目? かというと、それまでの箱に入っている個数の和。
- 一つの箱に入っている個数 は、箱の名前と同じ。
よって、初めて10 が現れるのは、
$(1+2+3+4+5)=15$番目
実際に数えてみて、正解です。
このように、簡単な数字であたりを付けておくと、その後の計算に自信が持てます。
初めて20が現れるのは
箱No.1 から 箱No.10 までの中に入っている数字の個数の和になるので
$1+2+3+4+5+6+7+8+9+10=55$番目
2.3 等差数列の和の計算方法
$1+2+3+4+5+6+7+8+9+10=55$ の計算方法ですが、
1) 暗記
1から10までの和が 55 であることは、覚えておいても損はないと思います。
2) 計算の工夫
和が10のまとまりを見つけて、10が5つ と 残り 5。 $10\times5+5=55$
3) 等差数列の和として考える
1~10の足し算を逆さまにして書きます。
$1+10, 2+9, \cdots$ と、それぞれの和は$11$ になります。
その和11が10個あるので
$11\times10=110$
これは、元の数列の2つ分なので、求める数列の和は
$110\div2=55$
計算をひとまとめに書くと、公式となります
{ (先頭の数) + (最後の数) } × 数の個数 ÷ 2
左から818番目は?
適当にアタリを付ける
適当に!? と 思うかもしれませんが、ヤミクモに考えても答えは出てきません。また、算数的に美しい解答もあるでしょうが、時間の限られた試験においては、とりあえず 分かっている知識でやってみることが重要です。
キリの良い数字を考える
では、どのように アタリ をつけるのでしょうか??
先ほどの問題から 箱No.10の最後の数字は 55番目であることがわかっています。
そこで、キリの良い 箱No.20, 箱No.30, 箱No.40, 箱No,50 … の最後の数字が何番目になるか?を考えてみましょう。
ここで、{ (先頭の数) + (最後の数) } × 数の個数 ÷ 2 を利用します。
- 箱No.20 → (1+20)×20÷2=210
- 箱No.30 → (1+30)×30÷2= 計算面倒なので、後回し
- 箱No.40 → (1+40)×40÷2=820
問題文の 818番にかなり近い数字が出てきました。よって、箱No.40を考えましょう。
※ なお、 箱No.40が、例えば 1200とか 818を大きく超えてしまった場合は、箱No.30を計算して、近い方を採用します。
箱No.40を考える
箱No.40 の最後の数は、
$40\times2=80$
この 80 が 820番目 なので、818番目を書き出していくと、
$\dots 76, 78, 80$
$76$であることがわかります。
※ 実際には 80から 左に 78, 76 と書いていきます。
問題作成者の意図
適当にやって正解できたのはたまたまでしょ? とお思いかもしれませんが、そうです たまたま かもしれません。
ですが、問題作成者も、問題の解き方がわかっていて理論的に考えることが出来ている子どもたちは、たまたま 出来るような 数値設定にしてあります。
763番目は何? という問題を作成することも可能ですが、763番目を求めるには、上記のような理論的な考え方を行った上で、さらに 細かい数値計算 をしなければ 正解を導き出すことができません。
愛光の大問1は、答のみ を書く出題形式です。763番目 という、細かい数値計算が必要な問題にしてしまうと、答えが違っている受験生の中には、
- 理論的に全くわかっていない
- 理論的には分かっているが、細かな計算を間違えた
の2種類の間違い(他にもありますが)が、混在することとなります。ですが、愛光側がこの問題で試したいのは、理論的に分かっているかどうか であって、細かな計算 ではないと思います。(あくまで 私の主観です…)
なので、理論的にわかっていて数値を当てはめていけば、たまたま正解になる数値設定にしてあります。
逆に、理論的にわかっていなければ、適当に答えてもたまたま正解にならないように作問してあります。
こういう所が、問題作成の面白さでもあり、やっぱり 有名校の問題は面白いなぁ… とも 思いますね。